提案書


 ビジネスにおいて形のない、触れることのできない商材を売るとき、それはどういうサービスなのか、という説明につい懸命になる。

東京ビッグサイトの展示会でも物理的なモノを展示できるブースのように「これです」と言えない。

分かりやすく目に見えるわけでもないITコンサルティングで、どのような方法なのかを「ああなって、こうなって」みたいな説明を行うことが多かった。

客観的に眺めたら、何をやっているブースなのか分からない。どういうサービスなのかが一目で分からない。

ますます、営業は「ああなって、こうなって」みたいなことを熱心に説明するようになった。

そんな流れもあり、これまで作ってきたパワーポイントの企画書は、やり方説明、方法解説、構成要素の説明・・・などにページに費やした。

 

先日、劇団四季の「アナと雪の女王」を見に(聴きに)行った時に、帰りの売店でオラフ(雪だるまのキャラクタ)のぬいぐるみを二つ買った。6,500円×2。

なぜ、ぬいぐるみに13,000円も払うのか。それはもらった相手が喜ぶのを見たかったからだろう。

ぬいぐるみのスペックや材料、形状、大きさなどを熱心に説明されても、買いたいという気持ちは起こらない。ぬいぐるみの所有自体が目的ではなく、相手の笑顔が目的だからだ。

 

そう考えると、これまでに書いてきた企画書は良くなかった。

セキュリティ対策や打ち合わせ方法、ファイル転送やソフトウエアの内容など、些末な構成要素の話や、どうやって使うのか的な説明ばかりしすぎた。

それを導入することによって何が起こるのか、どんな利益が得られるのか、何がメリットなのか、をもっと語るべきだった。

そんなわけで、今回の提案書は、プロジェクト参画によって得られるものを熱心に書いた。

仕事の中心が営業だった時に、もっとそういう認識を持っておくべきだった。

我々は、「そのサービスを導入した結果起こること、または起こると期待していること」に対して、お金を払うのであって、そのサービス自体にお金を払っているのではない。

 


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