解決の行方


幸いなことに仕事は非常に忙しく、一見充実した日々を送っているように見えた。

忙しさの本質は、ことごとく新たな問題の登場と、その解決から構成されていて、リピートする作業的な処理はあまりなかった。

顧客からの問い合わせの中には、今まで調べたことも考えたこともなかったような問題が含まれていて、その都度新しい問題に直面することになる。

そうした対応を繰り返すことは、自らのノウハウの蓄積に確かに役立ち、次回からの対応力が向上するのは間違いないのだが、「どうしたらいいか考える」ことは作業的な仕事に比べて明らかにストレスが大きく、精神的にも消耗する。

ものごとをゆっくり考えることもできず、安易な方法で解決させたことも多々あったし、一人ひとりに丁寧な対応ができていたとは決していえない。

エンジニアの給与改定の交渉などは、あまりに時間がなさ過ぎて、

「$80/月upで納得しろよ、これ以上時間がない、切るよ!」

のようなskype対応など、良くなかった。

相手にとってみれば月の給与が$100上がるのか$80上がるのかは、大きな違いだったのだ。

「どうしたらいいか?」という部下からの質問に、「自分で考えろ!」で終わらせたこともあったし、顧客の依頼に「面倒くさい」と言ったことさえあった。

1日数百件のメールを処理し、そのうちの百件以上に回答し、同時に複数人から呼ばれ、一度に2人や3人から電話がつながったりもした状況の中で、正常で落ち着いた仕事ができなくなっていた。

崩壊寸前のような猛烈な忙しさの中で、緊張しっぱなしだった。

そんなときにのほほんとした部下が「しょうもないこと」を話しかけると、パワハラ的な対応になった。

たとえて言うなら次のような状況。

ぼくは一人で巨大な岩を支えている。今にも押しつぶされそうになっている。もう体力の限界で、その重さに押しつぶされそうになっている。助けを呼ぶ余裕もない。そんなところに部下か、手伝いましょうかと現れる。内心ありがたいと思ったが、「軍手はした方がいいですか?」という部下の質問に絶望する。

ぼくと彼のおかれている立場はあまりにも異なる。

「空気を読め!」と怒鳴ったところで無理なんだろう。下手したら「両方右手用の手袋しかないんですけど、どうしましょうか?」とか言い出しそう。

結局のところ、そんな人たちの電話は話の途中でもぶちっと切るしかない。あなたと話している余裕はないし、説明している暇もない。場面はもっと緊迫しているし切迫している。電話の最初に「お疲れ様です」と言い合う時間さえ惜しい。

いきなり本題から話し出してほしい。

とにかく山のように問題があり、それが迫ってくる。次から次に解決していかないと、処理が間に合わない。

忙しい人は大体似たり寄ったりなのじゃないかなと思う。外側から眺めると、人を増やしてやれば解決するかのように見えるかもしれないが、よけいに面倒が増え、かえって仕事が増えることになる。

何も言わないで何も聞かないで、全てを理解して、ぼくの仕事を軽減させてくれる人は歓迎だが、「軍手はした方がいいですか?」的な人を採用してぼくにつけられても迷惑なだけだ。

というわけで、人手不足に困りながら、日々の問題をせっせと解決していくものの、この状況は解決できないのだった。


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